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周辺街区状況が壁面入射日射量に与える影響に関する数値実験


  1. 目的
  2. 計算方法
  3. 日積算入射日射量に関する要因効果推定表(月別、壁面方位別)
  4. 最大熱負荷発生時の入射日射量に関する要因効果推定表(夏季と秋季の時刻別、壁面方位別)
  5. 要因効果推定表の読み方
  6. 参考文献

お詫び:当初公開していた日積算入射日射量に関する要因効果推定表に誤りがあり、訂正致しました(2002.1.4)


目的

 市街地に位置する建物の殆どは、周囲の他の建物や樹木等により、直達日射の遮蔽、都市キャノピー空間における多重反射の増加、入射長波放射量の増加、建て詰まりによる風速の減少など様々な影響を受けています。
 しかし、現状の建物熱負荷計算においては、周辺建物等による熱的影響は一切無視した取り扱いとなっています。

 そこで、筆者らは、市街地に位置するビルを想定して、3次元理想街路の放射モデルを構築し、構築したモデルを用いて、街路形状、壁面日射反射率、ガラス面積率等を因子とする数値実験を行うことで、窓面入射日射量についての要因効果推定表を作成しました。


計算方法

 計算対象街路

 同一サイズの直方体建物群が碁盤目状に規則的に配列された街路を想定し、交差点部分の路面,それ以外の路面を3×3、建物壁面4方位各々を水平方向3×高さ方向(階数×3)の格子に分割している。壁面には、各階の中央の高さに水平に長い連窓を想定している。(下図参照)
 

また、下図に示すように、建物壁面には連窓に沿って水平に長い庇またはバルコニーを考慮できるようにしている。庇の位置は、各階窓の上端としている。バルコニーは各階床高さに設置し、最上階については、建物屋根面の高さに庇を追加している。庇とバルコニーの厚みは考慮していない。

窓面入射日射量の算出方法

 各格子の形態係数は、格子内を更に10×10に分割した各細分格子の中心点における点対面の形態係数の平均値を面対面形態係数として用いる。点対面形態係数の算出方法は次の通りである。各細分割格子の中心点Oを中心とする単位半球と単位円を想定し、次図に示す通り、単位円の面積を5000に等分割する。各小分割の中心点Aを通る垂線と単位半球との交点をBとしたとき、探査ベクトルOBが街路のどの構成面と接するかを、5000個の小分割について判定し、その割合から点対面形態係数を求める。

  

 直達入射日射量については、各細分格子における直達日射の有無を判定して得られる日向面積率を用いて算出する。尚、直達日射の有無は、各細分格子の中心点より太陽位置の方向に射出された探査ベクトルが周辺障害物にぶつかるか否かで判定している。1次の拡散日射量については、各格子における天空率より求める。

 反射日射量については、均等拡散と仮定してラジオシティ法によりキャノピー構成面を面対面の形態係数を用いて繰り返し計算を行い、反射日射量が1次入射日射量の1%未満で計算を打ち切る。尚、ガラスへの1次入射日射の直達成分については、入射角による日射反射率の変化を考慮し、ガラス面からの反射日射については、壁面や路面と同様に均等拡散すると仮定している。また、ガラス窓から室内への入射日射は室内壁、床に完全吸収され、屋外への再放射は生じないと仮定している。

 庇及びバルコニーの日射計算時の取り扱いは次の通りである。直達日射は、前述の通り、各壁面、道路面の細分格子中心点から太陽位置の方向に射出される探査ベクトルが庇・バルコニーにぶつかるか否かを判定する事で、庇・バルコニーにより生じる日影を考慮する。天空日射については、庇・バルコニーによる天空率の低減を考慮して算出する。多重反射については、庇及びバルコニーの日射吸収率を1.0と仮定し、考慮しないものとする。また、庇、バルコニーについては、入射日射量について注目したい方位の壁面のみに取り付け、その他の3方位の壁面では庇、バルコニーは考慮しない。

数値実験

前述の計算モデルを用いて、実験計画法に基づく数値実験を行い、周辺街区状況が壁面の入射日射量に及ぼす影響を、要因効果推定表に整理する。
実験条件の設定については直交表L81(340)を用いる。 
年間負荷に影響を与える窓面の日積算入射日射量と、年間の最大熱負荷発生時を想定して夏期及び秋季の晴天日の入射日射量を取り上げ、2通りの数値実験を行う。
太陽位置は東京を想定している。


日積算入射日射量に関する要因効果推定表(月別、壁面方位別)

特性値:日積算入射日射量月平均値の比=SRDb/SRDh

SRD:窓面入射日射日積算量の月平均値 [kcal/m2・day]
添え字b:周辺建物が有る場合
添え字h:道路日射反射率0.1で周辺建物が無い場合。
     日射遮蔽物(庇・バルコニー)の有無は分子のSRDbの水準に一致させる。

※基準日射量SRDhは、HASPのデフォルト値(文献1)を参考に道路日射反射率0.1としている。

気象条件:拡張アメダス気象データ(東京)の標準年

注意!! 当初公開した要因効果推定表の数値に一部誤りがありましたので訂正致しました(2002.1.4)。

因子及び水準は下表の通り。

因子 水準
  L1   L2 L3   L4     L5     L6     L7  
 A  壁面内高さ  1F   2F   3F  4F   5F   6F   7F 
h/H 0.07 0.21 0.36 0.50 0.64 0.79 0.93
B 街路幅 W/建物高さH 0.6 1.0 1.4        
C 日射遮蔽物の有無 無し 庇有り
奥行BD=1m
バルコニー有り
奥行EB=1m
手摺高=1m
       
D 道路日射反射率 0.1 0.2 0.3        
E 窓面積率 0.30 0.55 0.80        
F 壁日射反射率 0.2 0.4 0.6        

W:街路幅, H:建物高さ(=24.5m), h:壁面内位置(窓の高さ)

 北向き壁面   南向き壁面   東向き壁面   西向き壁面 (0.1%有意の因子のみ記載している)

訂正後のファイルは、頁の上部に、日付2002.1.4が明記されていますので、既にダウンロードされた方はご確認願います。


最大熱負荷発生時の窓面入射日射量に関する要因効果推定表(夏季と秋季の時刻別、壁面方位別)

特性値:入射日射量の比=SRb/SRhn

SR:窓面入射日射量 [kcal/m2・h]
添え字b:周辺建物が有る場合
添え字 -hn:道路日射反射率0.0で、周辺建物が無く、日射遮蔽物が無い場合
※基準日射量SRbnは、文献2)の最大熱負荷計算法では設計用壁面入射日射量に反射成分を入れていない点に倣って、路面からの反射日射無しとしている。

気象データ:文献2)における東京の設計用日射データ

因子及び水準は下表の通り。

因子 水準
  L1   L2 L3
A 壁面内高さ  1F   4F   7F
h/H 0.07 0.50 0.93
B 街路幅 W/建物高さH 0.6 1.0 1.4
C 日射遮蔽物の有無 無し 庇有り
奥行BD=1m
バルコニー有り
奥行EB=1m
手摺高=1m
D 道路日射反射率 0.1 0.2 0.3
E 窓面積率 0.30 0.55 0.80
F 壁日射反射率 0.2 0.4 0.6

W:街路幅, H:建物高さ(=24.5m), h:壁面内位置(窓高さ)

 北向き壁面(夏季秋季)  南向き壁面(夏季秋季
 東向き壁面(夏季秋季)  西向き壁面(夏季秋季)   (0.1%有意の因子のみ記載している)


要因効果推定表の読み方

<例1>市街地に位置する建物の窓に入射する日射量が、周辺建物の日影などの影響で、冬季1月にどの位少なくなるか、調べてみましょう。
条件 : 街路幅21m,街路の両側建物は10階建で、高さ34m
      注目する部屋は南面5
      道路日射反射率0.1(一般的なアスファルト舗装)、ガラス窓面積率30%、庇やバルコニーなどの日射遮蔽物無し

1.日積算入射日射量に関する要因効果推定表(月別、壁面方位別)の中の、「南向き壁面」のPDFファイルを見る。

2.PDFファイルの中の、「1月」に注目し、知りたい窓面の条件に合致する各因子の水準を探す。
  この例では、街路幅と建物高さの比W/H=0.6 で水準L1
         壁面内位置(窓高さ)は、建物高さの半分だから、h/H=0.5で、水準L4


3.次の式を計算して、該当する条件における点推定値Xを求めます。

X= 0.665  -0.459
  総平均+(壁面内高さ×W/Hの交互作用の効果)

  (この場合、主効果で有意となった2つの因子は、交互作用も有意となっているので、交互作用効果のみを、総平均に加算)

計算の結果、X=0.206  つまり、周辺に建物が全くない建物に比べ、この建物の窓面入射日射量は、1月に2割程度になる、という事が分かります。

<例2>次に、例1と同じ建物の部屋について、7月の入射日射量に対する周辺建物の影響を調べてみます。
  条件 : 街路幅21m,街路の両側建物は10階建で、高さ34m
        注目する部屋は南面の5階 壁日射反射率0.6 (一般的な明るい色のタイル)
        道路日射反射率0.1(一般的なアスファルト舗装)、ガラス窓面積率30%、庇やバルコニーなどの日射遮蔽物無し

1.日積算入射日射量に関する要因効果推定表(月別、壁面方位別)の中の、「南向き壁面」のPDFファイルを見る。

2.PDFファイルの中の、「7月」に注目し、知りたい窓面の条件に合致する各因子の水準を探す。
  この例では、街路幅と建物高さの比W/H=0.6 で水準L1
         壁面内位置(窓高さ)は、建物高さの半分だから、h/H=0.5で、水準L4
         日射遮蔽物無しなので、水準L1
         道路日射反射率0.1で、水準L1
         壁日射反射率0.6で、水準L3


3.次の式を計算して、該当する条件における点推定値Xを求めます。

X= 0.732      総平均
  -0.225     +壁面内高さ×W/Hの交互作用効果
  +0.054     +壁面内高さと日射遮蔽物の有無の交互作用効果
  -0.062     +道路日射反射率の主効果
  +0.029     +壁日射反射率の主効果
  - (-0.035)   −壁面内高さの主効果

  (この場合、有意となった交互作用効果の中に、重複して壁面内高さの効果が含まれているので、6項目で、壁面内高さの主効果を減ずる)

以上の結果から、X=0.563 、よって、周辺に建物が全くない建物に比べ、この建物の窓面入射日射量は、7月では約半分、と分かります。


直交表を用いた実験計画法に関する参考書


参考文献

1) 松尾陽・横山浩一・石野久彌・川元昭吾,空調設備の動的熱負荷計算入門,日本建築設備士協会,1980

2) 空気調和衛生工学会,設計用最大熱負荷計算法,pp.8,丸善,1989


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